いいかい?自信っていうのは、ある日突然湧き出るもんじゃないんだよ。溜めるものなんだ。
小野美由紀さんの
『傷口から人生~メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった~』
が、とっても面白かったので、感想です。最初から最後まで強烈です。
目次
小野美由紀さんとは?
たまたま友達に教えて貰い、小野美由紀さんを知りました。
作家、ライター、編集者。1985年東京都生まれ。慶應大学文学部仏文学科卒業。学生時代、世界一周に旅立ち22カ国を巡る。卒業後、無職の期間を経て13年春からライターに。Webと紙媒体の両方で、コラムやエッセイを執筆。-引用:
著者ブログ(現在リンク切れ)
以前、何かの本で、
「本を読むときは、作者さんのプロフィールを最初に読む。そうすると、その人と向い合って会話している気持ちになるから、読んだ内容を忘れなくなる。」
と聞いたことがあります。
それからは、本を読む前に作者さんのプロフィールをざっと読んでます。個人的には、自分の2歳年上の方ということで、親近感が湧きました。
「同時代をグロテスクかつ鮮烈に描く作家さん」とネットでちらっと見ましたが、実際にそんな雰囲気の作品です。とても生々しくて、面白い。
小野みゆきさんの「傷口から人生」読み終わった。世代観というか、感じるポイントに共感した。もっと早く読めばよかったなぁ。
— _(:3 」∠)_ (@kukurer) 2016年1月10日
小野美由紀さんの『傷口から人生』めっちゃタメになる。
— 大学院生のふじわら (@Fuyuki_FUJIWARA) 2016年1月9日
未解決人間 を読んでいたら、不意涙がこぼれそうになった
『傷口から人生。メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』
あらすじはこんなかんじ。エッセイです。ものすごく強烈です。
過剰すぎる母、自傷、パニック障害、就活失敗、女もこじらせ気味……
問題てんこもり女子、再生なるか!?
生きる勇気が湧いてくる、強烈自伝エッセイ。
過剰に教育的な母に抑圧され、中3で不登校。
キラキラキャンパスライフに馴染めず大学も仮面浪人。
でも他人から見てイケてる自分でいたくて、
留学、TOEIC950点、ボランティア、インターン等々。
無敵のエントリーシートをひっさげ大企業の面接に臨んだ。
なのに、肝心なときにパニック障害に!
就活を断念し、なぜかスペイン巡礼の旅へ――。
つまずきまくり女子は、問題の本質と向き合えるのか?
衝撃と希望の人生格闘記。
つっこみどころがありすぎます。TOEIC950点なんですね。すごい。
飲み会など、人とのコミュニケーションに消耗している描写が分かりやすい。
人に合わせて気疲れする気持ちが、「そうそう分かる…。」と思うようなリアルな描写で表現されています。普段胸にあるもやもやがすっきりするはず。
リア充が集まる飲み会の、全員が場の雰囲気を壊さないように、流れを止めないために、大きな一枚の布のすそをひっぱって、うまく落とさないように支えている感じ。流れを途絶えさせないように、壊さないように、絶え間なく気を遣っている感じ。自分をこの場にふさわしい、朗らかで、好き嫌いがなくて、コミュニケーションの上手な人間のように見せかける。
「コミュニケーション・リバウンド」
環境のせいにしないこと、世の中には自分と異なる考え方の人が沢山いること、の描写が面白い。
環境のせいにしないこと、世の中には自分と異なる考え方の人が沢山いること、の描写が面白いです。例えばこのあたり。
「環境が自分に合わせてくれると思ってるから、就活だってうまくいかなかったんじゃないの?」
家族のメンバーが、それぞれのシステムで動いていることに気づけないから、自分の思い通りにならない相手を、即座に全部否定してしまう。
世の中には色んな考え方の人がいて当然だし、一緒の空間にいれば、それらの意見が両立しないこともあります。
「トイレットペーパーは使った人が補充すべき」
と言う人もいれば、
「次に使う人が補充すればいい」
と言う人もいます。(友達が怒ってました。)
私の母はいつも、
「ご飯はみんな揃って食べないといけないの!!!」
と怒っていたけれど、戦争を経験していた祖母は、
「食べられるチャンスがあるときに好きなだけ食べるべき」
と言っていました。
同じ家に住んでたら、しょっちゅうケンカです。実際うちもケンカばかりでした。
でも、こういう違いは、あって当然。あって当然だからこそ、自分と違う意見を否定したり、攻撃しないことが大切だと思います。
自分と違う意見を否定したり攻撃するから、宗教問題や、テロが起きたりするんだろうなーと、よく思います。
ブラジルでは「自分の家族や、人生の悩みを、解決していない人間は、社会的に評価されない」という文化がある。
「ブラジルには、『マオ・レゾルビーダ』という言葉があるそうです。
直訳すると『未解決の人間』。自分の家族や、人生の悩みを、解決していない人間を指して言うんだ。マオ・レゾルビーダは、ブラジルでは社会的に評価されない。たとえ大企業の重役に就いていたとしても、『あいつはマオ・レゾルビーダだからな』と言われて、仲間内では信頼されないんだ。(略)」
こんな言葉があるんですね。初めて知りました。評価ポイントが人間の本質的な部分というところが、すごく良いと思います。
また、関連して、六本木のホステスのマキさんの言葉も、ぐっときます。
「中途ハンパが一番冴えないよ」
マキさんは、性転換手術をした元男性。言う人が言う人だけに、胸に刺さる…!
自傷行為についての心理描写が分かりやすい。
瀉血(しゃけつ)という方法で、自傷行為を行う著者。心理描写が生々しくて、鮮烈です。(※ハードなので、瀉血の説明は割愛します…。)
グロテスク過ぎて、描写がリアルすぎて、痛くて、途中で「うっ…」と胸がつまってしまって、読むのを止めました。でも読む。
「どうしてリストカットをするの?」
「死にたいなら死ねばいいじゃない」
「自分を傷つけるようなことはやめるべき」
「自分の身体を大切にした方がいい」
と思う人は、読むときっとこれらの疑問がクリアになります。
「瀉血」
とっても気持ちがよかった。何かを吐き出す行為というのは、なんにせよ、気持ちがいいのだ。セックス、生理、排便。少々乱暴な言い方をすると、自傷もこれらと同じだ。
手首を切ったからって、死にたかったわけでもない。ただ、言語化できない親へのいかりや屈辱感を、抑圧される苦しさを手首にぶつけていた。
どうにかこうにか、生きていくための方法を探して、辿り着いた方法が、鬱や、不登校だった。
(略)それは、なんとか生きてゆきたいという気持ちの裏返しだ。自分にとってよくないと分かっていても、エネルギーを吐き出さないほうが、もっと身体に悪いと、本人たちは直感的に分かっている。
そこには「命を粗末にしてはいけません」とか「自分を傷つけてはいけません」とか「自分を大切にしないのはいけません」といった倫理は通用しない。本人たちの絶対的な主観の中で、自分を現実につなぎとめるためにやっていることだから。
自傷行為は、つまりエネルギーの発散なのですね。
自傷行為は、無理矢理とめると本人が狂ってしまうと聞きます。友達にカウンセラーさんがいますが、「カウンセラーは自傷行為を止めることはしない。」と言っていました。
就活についての描写は、あまり響かなかった。
本の中では、就活に対するいろいろな反発心や、疑問や、劣等感などが描かれています。
「傷口から人生。」皆と同じ真っ黒のスーツ着込んで、いくつも企業を回りどれだけ自分が会社にふさわしいキラッキラなのものを持ってるかをアピールする。自分に嘘を連ねる就活苦しかったから、作者の悲鳴が突き刺さる。あれは人を潰す。追い立てられる圧力に潰れなかったのが不思議なくらいだ。
— イゾゲルゲ水乃 (@izogerge) January 11, 2016
しかし、就活についての描写は、私はあまり響きませんでした。恐らく自分が就活について何も疑問を持っていなかったからだと思います。
私が就活した頃は、リーマン・ショック後だったのでかなり苦労しました。特に私は苦戦した部類だったので、120社エントリーシートを送って、60社面接に行きました。
でも、会社に勤めて働くことは、世の中のシステムのひとつだと思っていたし、会社に勤めないなら起業して稼ぐ方法もあると思っていました。また、特にそれ以上就活に対して思うことはありませんでした。
でも、この文は面白くて好きです。
サクラ色の絵文字がたっぷりとちりばめられていた。自分の花道を自分で祝うように。
まとめ。社会や家族に対するもやもやがクリアになるので、おすすめ!
読みやすくて、面白いので是非読んでみて下さい!